いよいよ2020年度からプログラミング教育が小学校で必修化される。その目的はパソコンなどIT機器の利用ではなく、ものごとの事象を理解し、解決する論理的な思考を養うことにある。福岡県は国産プログラミング言語「Ruby(ルビー)」を使ったコンテンツ産業振興に熱心だが、北九州市立大学の山崎進准教授はこのルビーに文法が近く、より高速で拡張性が高いプログラミング言語「Elixir(エリクサー)」を使った社会実証を研究することで、さまざまな地域課題の解決に取り組んでいる。
―現在の研究内容を教えて下さい。
山崎 2012年にポーランドのプログラマが開発したプログラミング言語「Elixir(エリクサー)」を研究しています。高速で大量のデータを処理できるため、オンラインゲームなどに使われている欧米では人気の言語ですが、実はアジアではあまり知られていません。日本人が開発した言語に「ルビー」がありますが、エリクサーはこのルビーを参考にしたプログラミング言語であり、処理速度が遅いというルビーの課題を克服した理想的なプログラム言語です。現在はエリクサーのプログラムから大域的な構造を読み取り、高性能のマルチコアCPU(中央演算処理装置?プロセッサ)や、GPU(画像演算装置)で効率の良い並列処理を行うようにコード最適化する技術「Pelemay(ペレメイ)」を開発、公開しました。
―分かりやすく解説していただけますか。
山崎 この技術は特に消費電力あたりの性能に優れているので、スーパーコンピューターのような高い処理能力を市販のパソコンで実現できる可能性があります。例えば人工衛星から送られてくる大量の画像データを処理することや、今まで以上に高速なAI(人工知能)や機械学習を実現することも可能になります。地震や台風被害のデータを高速処理することで減災や防災につなげるのが狙いです。
18年にはエリクサーを使って事業を進める研究を立ち上げました。19年4月には九州工業大学や北九州工業高等専門学校などと連携した「ナッジ社会実装研究センター」も設立しました。
―北九州市はIoT(モノのインターネット)やAIを利用した産業振興にも力を入れています。山崎先生の研究が地域に好影響を与えそうですね。
山崎 北九州市が意欲的に取り組んでいるSDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)は素晴らしい取り組みだと思っています。17の目標の中には産業や教育、環境など地域にとって重要なミッションが多く含まれています。地域や社会貢献を考える上で取り組みは重要ですし、私が研究している技術を総動員した社会実装を世に出すことで北九州、ひいては九州全体を盛り上げることができればうれしいです。
―最後に学生にメッセージをお願いします。
山崎 高校時代はコンピューター研究会の部長を務めており、将来はゲームプログラマーを目指していました。ただ大学で材料工学を学んだことでゲームプログラマーの道は諦めましたが、大学院ではプログラミング言語処理系におけるコード最適化を研究しました。遠回りに見えても、真剣に取り組み続ければ道は拓けます。プログラミングに夢中になれるのであれば、極めるつもりでじっくり取り組んで欲しいと思っています。