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石井 和男 教授

あれば便利と思うロボットを開発、社会に提示するのが使命。

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻
石井 和男教授

ロボットと聞くと「鉄腕アトム」やホンダの「ASIMO(アシモ)」などの人型を連想しがちだが、実は身近に多くのロボットが溢れている。自動車や半導体など製造現場のほかに、搬送や介護、最近では掃除用なども登場している。今や我々の仕事をサポートしてくれる力強い味方として、なくてはならない存在なのだ。

社会が必要とする研究を続けるのが大学の役割

―ロボットとは何でしょうか。
石井 非常に答えにくい問いです。どこからがロボットと分けることは難しいのですが、あえていえば、ある環境下で与えられた仕事をこなすように最適化された自動機械といえばよいでしょうか。

―研究テーマは『フィールドロボットの開発と脳型情報処理技術を用いたロボットの知能化』です。
石井 知能化研究はこれまでも行われていましたが、これをもう一歩進めて社会で使われる意味を考え、具現化しようとしています。私は九州工業大学の『社会ロボット具現化センター』副センター長を務めているのですが、ここは大学の研究と社会をつなぐ扉と考えています。産学連携を強く意識して、社会が必要とする研究、世の中にこんなものがあれば便利だなと思われる“ロボット”を開発、提示することを使命としています。

想像力と継続して努力できる力さえあればロボットは創作できる

―産学連携については、自動搬送や電動車椅子、船底清掃用など、実用化に向けて複数のロボットの研究開発を進めていますね。
石井 ここで開発している自動搬送ロボットは、最大1トンまでの重量物を搭載して任意の姿勢で、任意の方向へ移動できる(全方位移動)ロボットです。大きな構造物も複数のロボットで隊列を組んで移送できる点が特長で、地元企業と共同で国の補助金等を活用しながら開発に取り組んでいます。『オムニホイール』と呼ぶ旋回や横方向への移動が簡単に行える特殊な車輪を装備しています。介護施設や医療機関向けに開発した電動車椅子にもこのオムニホイールを採用しています。手元のジョイスティックで全方位に移動が可能ですから、狭い通路もスムーズに通行できます。

全方位に移動可能な自動搬送ロボット。複数台による隊列走行も可能。▲全方位に移動可能な自動搬送ロボット。複数台による隊列走行も可能。

船底清掃用水中ロボットの開発は、船底や側面に付着する藻やフジツボを、ブラシが回転しながら自律走行で除去し、船の燃費向上を図ろうというものです。すでに海上保安庁や共同研究先の企業が所有する船舶での実験を行っており、現在4号機を開発中です。このように社会に役立つと思われるものを形にして、それを見た企業がインスピレーションを湧かせて製品化する。北九州市にはモノづくり企業が多数集積しており、産学連携の意識も高く、独自製品を作りたいと考える企業はたくさんあります。意欲がある企業や研究者には、北九州市や北九州産業学術推進機構(FAIS)が積極的にサポートしているので、研究開発も産学連携も大変やりやすい環境となっています。

―学術研究都市では九州工業大、北九州市立大、早稲田大の連携大学院『インテリジェントカー・ロボティクスコース』が2013年に開講するなど人材育成が盛んです。
石井 これまで勉強してきたことが、ロボット開発にどのように応用され、社会にどのような形で役立っているか。そのつながりを見えるようにして学ぶ意味に早く気付かせることが大切だと考えています。ロボットは総合工学と呼ばれ、数学、物理、情報通信などあらゆる知識が求められますし、チームプレーも求められるという意味で教育には非常に適した学問です。ロボットは決して遠い存在ではありません。想像力と継続して努力できる力さえあれば誰でも創作できます。自らが思い描く世界を実現できる環境がこの学研都市にあることを、学生たちには知ってもらいたいですね。

船底清掃水中ロボットの概観。空中重量約30s。中央のブラシで船底を清掃する。▲船底清掃水中ロボットの概観。空中重量約30s。中央のブラシで船底を清掃する。 ロボカップ中型リーグに出場するロボット。▲ロボカップ中型リーグに出場するロボット。
【プロフィール】 石井教授が指導する学生たちのロボカップチーム「ひびきのムサシ」は、ロボカップ中型機リーグで国内7連覇を達成中。今年12月に北九州市で開催されるトマトを収穫する競技会の企画、ロボット開発など、様々な分野へのロボット技術導入に関する研究開発を行っている。プライベートでは19歳−10歳まで6児の父。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、1969年生まれ、広島県出身。

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