私の研究室では、近未来の生活向上を見据えた研究を進めています。8つある研究テーマのなかで、今回は「自動運転」と「照明制御」に絞って、できるだけわかりやすくご説明します。
自動運転とは、ドライバーが行っている情報の検出や判断、さらに操作までを自動化し、車自体が状況を確認・判断して運転を行うことをいいます。私の研究室では、高齢者用の電気自動車自律走行を「自動運転」と呼んでいます。特に高齢者の事故防止に役立つように、運転支援・自動駐車といった支援システムについて研究を行っています。
研究に取り組むことになったきっかけは、FAISの渡邉副理事長から研究テーマの提示(自動車技術の今後の課題は、自動運転である)があったことと、九州・ひびきの自律走行研究会の発足です。また、北九州市は政令指定都市のなかでも1、2位を争う高齢化が進んでいる街です。北九州市の地形、交通網、高齢化という状況を踏まえて、公共交通機関が充実していない地域での「高齢者の新しい外出方法」として、安全機能を発展させたモビリティが期待されています。
現在は学研都市敷地内に走行コースを設けて、自律走行と隊列走行、さらにアクセルとブレーキ操作を駆使した自動追従走行を繰り返し行っています。小型電気自動車にローコストセンサー(超音波センサー、ステレオカメラ等)を取り付けることで、安価な自動走行制御システムが可能になりました。今後は人の介在を減らし、性能を向上させて、模擬公道(自動車学校)などでの実証研究を進めることが目標です。将来は北九州を自動運転の実証研究特区とし、自動運転技術の応用、活用研究ができればと思っています。
照明制御とは、無線センサーネットワークによる照明の新システムのことです。個人の意識や努力による「節電」には限りがあります。私の研究室では安価で広範囲、そして効果的な節電システムを研究しています。具体的に申しますと、外光を部屋の中に取り入れて、必要最小限の照明を提案するとともに節電(昼間は50〜60%、夜は30%)を呼びかけるものです。この研究は、学研都市にある博通テクノロジー社との共同で行っており、「北九州市環境未来技術開発助成事業」に採択されています。
工事が簡単なうえ、大きな節電が特徴です。天候や時刻によって刻々と変わる屋外の明るさに応じて、室内の照度を自動に調整するもので、発光ダイオード(LED)にも対応できます。
照明制御システムのしくみは、室内に複数カ所設置した照度センサーから、その場所の明るさを認識し、無線で親機に送信します。送信された情報をもとに、窓際は照度を落とし、逆に部屋の奥は明るくするなど部屋全体の明るさを一定に保ちます。先日行った東田地区とひびきの地区での実証実験では、42%の節電効果が確認できました。
「自動運転」も「照明制御」もどちらも社会に役立つ研究です。実用化を励みに、これからも「ものづくり」の一端を担っていきたいと思っています。