研究室最前線
片山 雄介

流れを読み解き、エネルギーに新たな価値を

北九州市立大学 国際環境工学部 機械システム工学科
片山 雄介准教授、博士(工学)

九州で唯一の環境未来都市・北九州市では、風力や太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーの取り組みが急速に進んでいる。なかでも風力発電は今年、響灘で25基の洋上大型風車が稼動を始めたが、これは国内の洋上風力の総出力40%を占める一大注目事業といえる。ただ再エネの取り組みは大型だけではない。北九州学術研究都市では小型水車や泡の挙動などを通じて、市内企業の脱炭素も支援していく。

●泡の挙動を研究

Qユニークなエネルギーシステムの開発を行っています。
 片山 学生時代は、小さな落差や身近な水の流れをエネルギーに変える水車の研究を行っていました。信州大学で2016年に博士(工学)を取得し、その後九州大学では水中に生じる泡の挙動を、早稲田大学では水車やポンプの性能評価、異常を捉える計測を研究してきました。一貫しているのは「流れの中で何が起き、それが機械の働きをどう変えるか」です。高速撮影や圧力・音の計測、数値計算を組み合わせ、性能向上や故障予防につながる現象の理解を進めてきました。2026年4月に故郷・北九州市の北九州市立大学へ着任し、培った知見を現場で役立てたいと考えています。

Q風力や水力発電をイメージすればよいのでしょうか。
 片山 水や空気の流れ、また液体が気体や固体へ変わるときの現象を指します。特に用水路で発電する小型水車、キャビテーションと呼ばれるポンプの中に泡が生じる現象、液化二酸化炭素の急激な変化などです。泡の挙動はとても重要で、キャビテーションが発生すると機械には深刻な不具合が発生します。周囲の温度や水に溶けた気体に着目し、泡がなぜ生まれ、どう消えるのかに迫ります。液化二酸化炭素については圧力が急激に下がった時、気体やドライアイスがいつ、どのように発生するかを調べています。共通するのは「起きた現象を観察する」のではなく「起きる条件を予測する」です。見えない変化を測り、機械を安全に使う根拠をつくります。

●売電でなく付加価値に

Q北九州市では洋上風力の整備が進んでいます。
 片山 洋上風力を含めた北九州市の脱炭素社会実現に向けた取り組みには大変注目しています。北九州市には大企業から中小企業まで多くの製造業が操業しており、高い技術力があります。市民の環境意識が高く、再生可能エネルギーの理解が深い点も見逃せません。私がこの街で目指したいのは、再生可能エネルギーを導入するだけでなく、使いこなし、改良する技術まで地域に蓄積することです。モノづくりの現場と大学の研究を結び、企業や自治体の困り事から研究課題を一緒に見つけたいと思っています。洋上風力でも発電効率と海の環境を別々に考えず、両立のために何を測り、どう評価するかを問い直したいのです。

Q研究の成果は地域貢献の一助となりそうですね。
 片山 エネルギーは大規模なものだけとは限りません。水路の流れで水位計や監視カメラを動かし、さらに水車の回り方から水の状態を読み取れれば、「発電する見守り役」になります。これは農業のIoT化につながります。また、泡の状態からポンプの異常を早く捉える技術や、液化二酸化炭素の輸送で配管の詰まりを予測する技術は、設備の安全性向上につながります。私は発電を売電ではなく、付加価値につなげたいと思っています。本市には多くの企業や大学があります。それぞれの異なる専門性を持ち寄れば一つの研究室では届かない課題に挑めます。学生も現場に入り、自分の研究が社会でどう役立つかを実感できる場にしたいですし、この街で確かめた技術を、他の地域や海外へも広げて行ければ嬉しいです。本学には赴任したばかりですが、洋上風力では機械、情報、海洋環境などの専門家が共通の課題に取り組む研究拠点づくりを目指します。人材育成では技術を生み出すことと、未知の課題に挑める人を育てていきたいです。

液化炭酸ガス(LCO2)の相変化(クリックで図を拡大)

 【プロフィール】
 小学生から始めた野球は、小倉高校で双子の兄とバッテリーを組んだ。捕手として臨んだ夏の県大会はベスト16で涙を飲んだ。体を動かすことが好きでスキューバダイビングやスノーボード、マラソンと色んなことに挑戦したが、コロナ禍を機に「ひとまず休業中」。今は2人の息子と走り回って遊ぶのが楽しみ。信条は「『わからない』は好奇心の入口。まずは動いて、挑み続ける」姿勢を大切にしている。早起きで、朝5時にはキッチンで好きなコーヒー豆を挽き香りを味わいながら、疑問に挑んでいる。

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