研究室最前線
橋本 健二

ヒトに役立つロボットつくる

早稲田大学 理工学術院大学院情報生産システム研究科
橋本 健二教授、博士(工学)

アニメの世界では鉄腕アトムやガンダムが、現実世界にもホンダのアシモやソフトバンクのペッパーなどが活躍するなど、ロボットが身近なものになりつつある。一方で用途は限られており、ロボットが人や社会の役に立つにはまだ多くの課題が立ち塞がっているのが現実だ。こうした中、北九州市の学研都市では災害現場など過酷な環境下でも利用できるロボットの研究に注目が集まっている。

●AIを活用

Q2足歩行ロボットの研究を行っています。
 橋本 実父が公益財団法人鉄道総合技術研究所の技術者だったこともあり、子供の頃から動くモノが好きでした。小学生の頃はミニ4駆で遊んでいましたし、ロボットにも興味を持っていました。早稲田大学理工学部に進学後は一貫してロボティクス、特に人型・脚型ロボットの運動制御や身体設計に関する研究に取り組んできました。2012年にはイタリアのScuola Superiore Sant'AnnaのBioRobotics Institute(聖アンナ大学院大学のバイオロボティクス研究所)に研究員として、その後フランス政府給費留学生としてCollège de France(コレージュ・ド・フランス)に博士研究員として在籍。国際共同研究を通じて、ロボットが人間のように環境に適応して動くための基礎理論と実装技術を蓄積してきました。

Q産業用ロボットはすでに多くの工場で利用されています。
 橋本 私の研究はロボットとAI(人工知能)を組み合わせ,災害現場や危険な環境など人が立ち入ることが難しい場所で人の代わりに活動できるロボットを実現することです。災害現場やインフラの点検、老朽化したプラントの保守など、人が入りにくい場所で活動できるロボットを対象に身体の構造設計、動き方の制御、周囲を理解する知能を組み合わせて研究しています。シミュレーションだけでなく実際に動くロボットを作り、改良しながら完成度を高めていくことを大切にしています。

Q研究成果が社会に、また地域にどのような影響を及ぼすとお考えですか。
 橋本 研究の成果は災害対応、インフラ点検、製造・サービス現場など深刻な人手不足が進む分野に利用を促します。特に北九州市のように産業集積と高齢化が同時に進む地域では、ロボット技術による作業支援や安全確保が重要になります。大学で生まれた技術を企業や自治体と連携して社会実装することで、地域産業の競争力向上や雇用創出にもつなげたいと考えています。産業界との結びつきでいえばロボットメーカーのテムザック(京都市上京区)など複数社と連携して製品開発を進めています。ロボット開発の国産連携組織・京都ヒューマノイドアソシエーション(KyoHA)を組織し、私も理事となってサプライチェーン構築も進めています。

●社会で使う技術

Q課題は何ですか。
 橋本 ロボット技術を研究室の成果で終わらせず、社会で使われ続ける技術にすることです。そのためには性能だけでなく安全性やコスト、運用方法まで含めて考える必要があります。今後はAIやデータ技術とも融合し、ロボットが環境や人から学び続ける仕組みを構築したいと考えています。同時に次世代を担う学生や若手研究者の育成にも力を入れていきます。

Q産業都市の北九州市で研究を行う意義をどうお考えですか。
 橋本 北九州市や学研都市は大学研究機関企業行政が物理的にも心理的にも近く、研究成果を社会につなげやすい環境だと感じています。研究室で生まれたアイデアを地域企業と議論し、実証・改良できる距離感は大きな魅力です。またモノづくりの街として技術を大切にする文化を強く感じています。多くの地場企業と研究を共同で行うことで新たな成果も生まれますし、研究と地域課題がつながる場としてもさらに発展してほしいと期待しています。

 【プロフィール】
 趣味はものづくり全般で、自宅でも機械を分解したり改造したりする。実母が佐賀県出身で、本人も佐賀県生まれ。夏休みには毎年佐賀県を訪れていたという。実父の仕事の関係で幼少期は静岡県や神奈川県などを転々としながら過ごし、小学2年生から東京・八王子市に移り住み、小学生時代の同級生と結ばれる。夫人がスキーインストラクターの免許を持つ腕前のため、九州ではなかなかスキー場に行けないのが悩み。家族との時間を大切にしており、仕事と生活のバランスを意識することが「長く研究を続けるための秘訣」とか。1981年生まれ。

研究者(研究室)詳細情報: https://hashimoto-lab.jp/

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