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松本 亨 教授 北九州市立大学 国際環境工学部

環境影響評価(LCA)分析で
数値化して環境負荷を見えるカタチに

北九州市立大学 国際環境工学部
松本 亨教授

課題が期待にかわるLCA!
「紙おむつ」が資源に

私どもの研究室では、人間活動、社会経済活動を環境システム面から分析することに重点を置いた研究を行い、循環型社会や低炭素社会形成のために、環境システム工学や社会工学等の手法を用いてさまざまな課題に取り組んでいます。
今回ご紹介する研究テーマは「社会システムのLCA(環境影響評価)分析」。製品・サービスの製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用までの各段階における環境負荷・影響を明らかにし、その改善策を検討するための手法です。当研究室では、さまざまな研究テーマを抱えていますが、そのなかから、未来型の社会システムとして注目されている「紙おむつリサイクル」にスポットをあて、お話しをしたいと思います。

「CO2カリキュレーター」の開発

混同されることも多いですが、リサイクルには、ごみを燃やし、その際に発生する熱をエネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」と、使用済み製品や生産工程から出るごみなどを回収し、利用しやすいように処理して、新しい製品の材料もしくは原料として使う「マテリアルリサイクル」があります。
これからお話する「紙おむつリサイクル」はこのマテリアルリサイクルに該当し、行政のリサイクル関連の部署や、リサイクル事業者などとの協働で研究を進めています。使用済み紙おむつの現状を見つめ、リサイクルシステムのしくみを立案し、評価システムを構築するものです。当研究室では、この環境影響評価(LCA)分析を、インターネットのWeb上で誰でも実行できるようにした「CO2カリキュレーター」を開発し、環境への負荷がすぐさま測定・評価できるようにしています。
このプロジェクトでは、家庭から紙おむつを回収・再生利用するマテリアルリサイクルを行うことで、パルプや高分子吸収剤の再利用を実現化するとともに、高齢者のみ世帯の増加といった高齢化社会の抱える諸問題への対処についても同時に検討が進められています。

産学官の協力のもと、
焼却ごみは資源に生まれ変わります

昨年10月から、福岡県の大木町において、全国初の紙おむつ分別回収がスタートしました。紙おむつメーカー5社が回収ボックスの設置に協力し、メーカー、消費者、自治体が一体となった取り組みは、今注目を集めています。回収された紙おむつは、水溶化処理し、再生パルプとして耐火ボードなどの建築資材に再利用されています。従来の焼却に比べて約4割のCO2を削減することが可能になりました。

さらにCO2削減の見える化と価値創出を
重点的に

現在、「紙おむつリサイクル」のほか、紙おむつ製造時のCO2排出量のオフセット(相殺)について検討しています。また、ソーラーパネルのリサイクルについても研究を進めています。アジアの持続可能な発展も大きなテーマの一つです。アジアの都市を対象に、廃棄物や大気汚染等の都市環境マネジメントに取り組んでいきたいと思っています。

町内60カ所に設置された紙おむつ専用回収ボックス
大木町「紙おむつ」の分別回収システムの概要

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