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加藤 珠樹 准教授 九州工業大学大学院 生命体工学研究科 生体機能専攻

生物有機化学による機能性ペプチドの設計および合成

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能専攻
加藤 珠樹 准教授

生体の“材料”であり、
“道具”でもあるペプチド。

当研究室では主に、ペプチドを用いたナノ構造体の形成および機能性ペプチドの設計と合成を行っています。ペプチドというのは、アミノ酸が数個から数十個つながったもので、さらに約50個以上つながるとタンパク質と呼ばれます。言い換えれば、筋肉や皮膚など身体をつくる材料になったり、分解や代謝などの酵素として働いているタンパク質の一部、その小さな構成ユニットがペプチドです。
私たちは有機合成化学の手法によって、設計通りのアミノ酸配列を持つペプチドの合成に取り組んでいますが、この方法では天然には存在しないアミノ酸を組み合わせてペプチドを合成することができます。将来的にはこれらを医療用の構造材料として使ったり、特定の機能を持たせて医療分野に役立てることをめざして研究を進めています。
私たちの研究テーマの一つに「ペプチドナノチューブ」の構築があります。もともとペプチドは、アミノ酸が一本の鎖のようにつながったものですが、その両末端をつないでやると、図1のような環状ペプチドになります。アミノ酸をうまく組み合わせて、この環状ペプチドを積み重ねていくと、中が空洞のナノチューブとなってどんどん伸びていきます。チューブ状にする利点は、このペプチドに何かの機能を持たせようとする場合、最初はこの分子、次はこの分子という具合に設計通りに一列に並べられることです。現在はナノチューブを形成して機能の導入を試みている段階です。

機能をもったペプチドを設計・開発し、
医療分野へ。

二つ目のテーマは「酵素活性検出システム」です。これは蛍光性のペプチドを設計合成し、バイオチップへの応用をめざす研究です。たとえば、病気になったり、体調が悪くなると、体内にある特定の酵素が増えることがあります。その酵素が特定のぺプチドを分解することがわかっている場合、そのペプチドが切りとられたら蛍光物質が光りだす仕掛けをつくって、特定の酵素の活性を検出できるシステムを開発しています(図2)。検体の血液とか尿をサンプルにして、チップで簡単に病気が見つかるようなシステムの開発をめざしています。
三つ目は「酵素阻害剤」の研究です。ある特定の酵素が働き過ぎるとガンなどの病気になりやすいということが明らかになってきており、現在そうした酵素の働きを阻害する医薬品の開発が多くの研究機関で進められています。その一環として、私たちも各種の病気に関連する酵素の働きを阻害するペプチドの開発に取り組んでいます。当研究室では、アミノ酸が4個並んだ環状テトラペプチドを用い、その配列を人工のアミノ酸で置き換え、特定の酵素が働くのを抑える機能をもったペプチドを合成しています。
この酵素阻害剤も、先ほどのナノチューブも、バイオチップも、いま基礎研究の段階でうまくいっていることを足がかりにして、一つ進んだら次、それをクリアしたらまた次といった具合に、果てしなく発展させ続けていきたいと思っています。

図

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