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吉村 猛 教授、陳 松 助教 早稲田大学大学院 情報生産システム研究科

システムLSI設計自動化のための最適化技術

早稲田大学 大学院情報生産システム研究科
吉村 猛 教授、陳 松 助教

大規模化するLSI設計。
その鍵を握るフロアプラン

システムLSIが大規模化・複雑化するにつれて、実用的で高性能な自動設計ツールの開発が強く求められています。LSIの設計は機能設計、論理設計、レイアウト設計の順に行われますが、当研究室では主に機能設計の自動化や、レイアウト設計前のフロアプランにターゲットを絞って、その最適化に取り組んでいます。
フロアプランとは、LSIチップ上に加算器やメモリーなどの機能ブロックを配置してレイアウトの大枠を決めることです。その場合、膨大な個数のブロックを指定された領域内に重ならないように、かつ配線の長さを最小にして配置する必要があります。(図1)近年はLSIの大規模化によって、回路素子間の配線による遅延の問題が大きくなっています。そのため配線遅延をできるだけ回避し、その後のレイアウト工程の初期解となるフロアプランの重要性が増しています。
フロアプラン問題はかなり前から皆さん研究されていますが、現在、学研都市内の北九州市立大学におられる梶谷先生のグループが「シーケンス・ペア(Sequence-pair)」という画期的な手法を開発されて以来、研究が盛んになってきました。我々のフロアプランの研究は、梶谷先生らの成果をいかに効率よくアルゴリズムとして実現するかというものです。さまざまな工夫を重ねた結果、我々が提案したモデル化手法は国際的にも高く評価され、米国電気電子学会(IEEE)の論文賞を受賞しました。

すべての評価項目で、
世界をリードする性能を実現

たとえば、ベンチマークテストではフロアプランのすべての評価項目(指定領域内配置成功率、配線長、計算時間)において、世界の代表的な手法を大幅に凌駕する結果を出しました。その差は設計するLSIの規模が大きくなるにつれて拡大していきます。(図2)また、実回路(LDPCデコーダ)による設計評価においても、一般の商用ツールだけで設計した場合と比べて、我々のフロアプランだと領域比が−25%、遅延が−8%という結果が出ています。(図3)
一緒に研究している助教の陳さんは、プログラムやデータ構造に詳しい非常に優秀な研究者です。実は、世界をリードするような性能を実現するためには、アルゴリズムだけではなく、プログラミングのノウハウとか、データ構造まで工夫する必要があります。そういうところまで含めて、今後は超大規模な問題をできるだけ高速に解くための新しいアルゴリズム手法を追求し、世界トップレベルの性能に一緒に挑戦していきたいと思っています。
私自身はかつてNECという企業にいて、東京都の水道網や航空機のフライト・スケジューリングなど、さまざまな最適化について研究してきました。「最適化の技術」は応用分野が広く、当研究室には最適化と名の付くものなら何でも対応できるノウハウがありますので、LSI設計以外の分野でもお役に立てると考えています。

図

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